6月27日に「北欧の音楽ピクニック2020」という音楽会を youtube で視聴しました。
北欧の音楽家を中心に、北欧の楽曲・音楽の楽しみ方に共鳴する日本や世界の音楽家たちが、外出がままならないこの状況下、リモートで音楽を届けてくれました。
例年のようにどこかの会場で開催されていたとしたら、音楽にさほど熱のない私は足を運ぶことなく、夏の宵のまだ遊び足りないようなそわそわした空気が音楽によってやさしく凪いでいくひとときを味わうことはなかったでしょう。
その場に立ち会うことでしか得られない感動は確かに在ると思いますが、淡い興味や軽い好奇心を抱くにとどまっている世界を覗くのに、オンライン配信は良い入り口だと感じます。
音楽会は6部立てでそれぞれの部にタイトルが冠せられており、スタートの第1部は「ユグドラシルの森」でした。
ユグドラシルは北欧神話に出てくる大樹で、その懐にすべての世界と生物を擁しています。
樹の種類はセイヨウトネリコとされ、日本に自生するトネリコとは別の種のようです。
トネリコを私は見たことがないのですが(分からないだけで、或いはあるのかもしれませんが)、名前は以前から知っており、それは村上春樹の小説のなかに出てくるからでした。
―「その柄も俺が作った。十年もののとねりこの木を削って作るんだ。柄には作るものそれぞれの好みがあるが、俺は十年もののとねりこが好きだね」
とねりこ、という不思議な、そしてやわらかな粘りを感じる音が平仮名の表記とあいまって印象的で、初読以来ずっと頭に残っていました。
トネリコは丈夫な材質で、刃物の柄や野球のバットなどに用いられます。
ちなみに、この小説『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は何度も再読しているのですが(疲れているときの定番)、音楽会の前にもちょうど読んでいて何か偶然のつながりを感じました。
小説の最後には本筋とは関係ないですがフィンランドも出てきます。
トネリコをめぐる偶然のつながり、実はもうひとつありました。
我が家は鳥を飼っているので、日常的に鳥に関する情報を見ています。
最近「鳥に安全な植物」というネット記事を読んでいたのですが、一覧にトネリコが挙がっていました。
これだけ続けて目にしたので、勢いにのって思わずトネリコのイラストが描かれたTシャツを購入してしまいました。
トネリコのセレンディピティを、幸運につなげることができますように。